「残業しているのに給料が変わらない」「月給にみなし残業代が含まれているらしいが、超過分は払われない」——そういうモヤモヤを抱えながら、それでも声を上げられずにいるSESエンジニアは少なくない。これは個人の問題ではなく、SESという業態が生み出す構造的な問題だ。
みなし残業制度がSESで機能しやすい理由と、残業代が払われない状況が生まれる3つの構造がわかります。また、この環境から抜け出すための判断軸も整理します。
「みなし残業代込みの月給」でSES会社が得をする仕組み
客先常駐では、月給に「固定残業代(みなし残業代)」が含まれているケースが多い。求人票には「月給28万円(みなし残業45時間分含む)」と書かれており、一見すると相場並みに見える。しかし実態は、45時間以内の残業はすべて「込み」として扱われ、追加の残業代はゼロになる。
SES会社にとってのメリットは明確だ。客先から受け取る「時間単価×稼働時間」は残業するほど増えるが、エンジニアへの支払いは固定のみなし残業範囲内で完結させられる。つまり、エンジニアが残業するほど会社の取り分が増える構造になっている。還元率の低さと組み合わさると、この差はさらに広がる。
みなし残業制度は、残業するほどエンジニアではなく会社が得をる仕組みとして機能する。
サービス残業が「あたりまえ」になる現場の力学
客先常駐エンジニアの残業管理は、雇用元のSES会社ではなく客先に委ねられることが多い。客先のプロパー社員が「今日も遅くまでありがとう」と言いながら退勤してしまえば、SESエンジニアだけが深夜まで作業する状況が生まれる。
問題は、このときの超過残業をSES会社に報告しても「客先との契約上、一定時間を超えると請求できない」と言われるケースがある点だ。契約上限を超えた時間は「サービス残業」として吸収され、エンジニアの善意で成り立つ。こうして「断りにくい空気」が积み重なり、サービス残業が常態化していく。
残業の管理権が客先にある構造が、SESエンジニアのサービス残業を生む温床になっている。
みなし残業の「超過分」が払われない3つの罠
法律上、みなし残業時間を超えた分は別途支払われなければならない。しかしSESの現場では、その超過分がうやむやになりやすい理由がある。
支払われない典型パターン:
- 勤怠記録が客先管理のため、SES会社が実態を把握していない
- 「超過分は翌月の案件調整で対応する」と口頭で言われ、書面が残らない
- 客先の指揮命令で動いたにもかかわらず、SES会社が「自主的な残業」と処理する
これらはどれも、年収が上がらない構造と根本的に同じ問題だ。エンジニアの労働対価を「見えにくくする」しくみが重なっている。
超過残業が払われないのは法律の問題ではなく、SESが意図的・非意図的に作り出す「見えにくさ」の問題だ。
みなし残業の実態から抜け出すために知っておくべきこと
みなし残業の問題を解決する方法は、大きく分けて2つある。ひとつは今の会社に是正を求めること、もうひとつは環境ごと変えることだ。
前者は法的には正当だが、SESという構造の中で声を上げ続けるコストは高い。客先との関係、社内の評判、次の案件へのリスク——そういった「空気のペナルティ」が現実にある。自社開発企業や高還元SESへ転職した場合、残業代の計算方法そのものが変わることは知っておいていい。転職市場でのSESエンジニアの評価は、みなし残業で消耗した分を回収できる水準にある。
みなし残業の搾取は会社単位の問題ではなく、SESという業態の構造問題だ。是正より環境移動のほうが現実的な解になりやすい。
まとめ:みなし残業の問題は「給与の見えにくさ」に集約される
ここまで整理したポイントをまとめると、根本は2点に集約されます。
- みなし残業制度は、残業コストをエンジニア側に転嫁するしくみとして機能しやすい
- 残業の実態が客先とSES会社の間に挟まれて見えにくくなることで、超過分の未払いが常態化する
どの転職先が残業代をきちんと払うかの比較は、以下の記事でまとめています。
NEXT転職エージェントを比較する残業代という概念が消えた夜の話
当時、「みなし残業」という言葉の意味を自分は本当に理解していなかった。 月給明細を見ても「固定残業代 ○○円含む」の一行の意味が実感できなくて、深夜に客先のフロアで一人作業しながら「まあ仕方ない」と思ってた。指先が冷たかった。
ある日、後輩に「超過した分って別途出るんですか?」と聞かれた。答えられなかった。その夜、初めてちゃんと調べた。そのまま求人サイトの年収診断を触ったら、今より100万以上高い数字が出て喉の奥が熱くなった。
知らないままでいるほうが、じわじわと損だった。 まず転職エージェントに相談してみることで、自分の適正年収と今の乖離がはっきりした。